“私”から“私たち”へ。
まちの創造力が目覚める、開かれた実験の場
文化的活動には、これまで結びつかなかったものを結びつけたり、お互いを引きつける力があります。多様な価値観を持ち、それぞれのスタイルで暮らす人々が集う東京は、どこで・誰が・何をしているのかが見えにくく、「私」という「個」の存在は際立っても、まちそのものや、過去・未来を含めてそこに暮らす「私たち」の存在をリアリティを持って感じることが難しくなっているのかもしれません。
ただ、この東京で、あるいは社会全体で誰もがどこかで感じている“不安”のようなものは、「個」の考えや存在では拭うことができません。それは「私」という個の意識が、「私たち」という俯瞰した意識に広がったときに、はじめて問題の核心に辿り着いたり、解決策を見いだせるのではないでしょうか。
「東京ビエンナーレ」は、戦後の復興期に上野の東京都美術館で行われていた国際展です。中でも1970年、「人間と物質」をテーマにした第10回は日本の美術史に大きな足跡を残すものでした。そこから半世紀が経ち、アートや芸術のあり方も大きく変化した今の東京で、新しいフレームや仕組みを実験する場として「東京ビエンナーレ」を2020年に始めようとしています。
これはアートのための国際催事ではなく、まちに宿る文化資源を丁寧に感じ取り、その可能性を引き出し、「私」から「私たち」へ意識や創造的な活動を広げるフレームです。そのため、参加するのはアーティストだけではありません。アート、デザイン、建築、まちづくり……etc.あらゆる方向からアプローチしていきます。
東京ビエンナーレ市民委員会 共同代表
中村政人(アーティスト)
小池一子(クリエイティブディレクター)
2018年10月
東京ビエンナーレがめざすもの
「私たちの文化」を「私たちの場所」で「私たちの手で創る」
東京ビエンナーレが目指す活動は、様々な「私」が出会い、「私たち」で共有する事象である。
この地域に昔から暮らす住民と、日本各地、世界各地から集まってきた新しい人々。さまざまな人々が暮らし、働き、遊ぶ国際都市東京で、アートはさまざまな出自をもつ人々をつなぎ、このまちの歴史を顕在化し、未来を描き出すことで、「私たち」を出現させ、また新たな「私」を発見するだろう。
「アート×コミュニティ×産業」をキーワードに、地域の人々とともに、「HISTORY & FUTURE」「EDUCATION」「WELL-BEING」「RESILIENCY」を活動コンセプトとして、自分たちの文化を、自分たちの場所でつくっていくこと。
東京ビエンナーレは「私たち」がつくる新しい都市と文化の祝祭である。
アート × コミュニティ × 産業
歴史と未来
HISTORY&FUTURE
教育
EDUCATION
幸福感
WELL-BEING
回復力
RESILIENCY
実施エリア
東京都心北東エリアにあたる千代田区・中央区・文京区・台東区の4区にまたがるエリア中心を開催エリアに設定。歴史文化的にも特徴ある豊かな地域として、全国にもその名を知られるスポットが多く点在するエリアだが、今まで隣接していながらもエリア同士が協働で取り組む具体的な取り組みは無かった。
東京ビエンナーレでは、プログラムを通じて今までになかった人や活動の回遊性の向上と、エリアとしてのブランディングを図り、都市の未来を描いていく。
既にコミュニティの中で揺るぎない存在感を示す建築物やパブリックな施設、空間をあえて活用することで、東京ビエンナーレの作品の開催時と開催後のあり方を問う。
水辺や遊休空間等、未開でありながらエリアに存在する場所の新たなポテンシャルも同時に見いだして活かしていく。
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例:
- 歴史的建築物/江戸から東京へ移り変わる歴史と共にある建物
- 学校(校舎・校庭など)/地域に暮らす人たちの真ん中にある学校を活用する
- 公共空間(公園・道路など)/人々が集い行き交う場所
- 遊休空間/今は使われていないポテンシャルの高い場所
- 水辺/江戸時代に造られ現存するお堀・川やその周辺