EXHIBITIONS
彫刻・立体
会場
日本橋・馬喰町エリア
日本橋室町・本町の路地裏
中央区日本橋室町1/日本橋本町1
エトワール海渡リビング館
千代田区東神田1-15-15
日程
無料
岩岡純子の作品はエトワール海渡リビング館で展示(月火休、ただし祝日除く。11:30–18:00、金のみ19:00まで)。有料会場ですが同作の鑑賞は無料。
都市の構造を物理的、観念的な「スキマ」からとらえ、ビルの間のわずかな隙間(すきま)を作品発表の空間や作品そのものとして活用する試み。1999年に中村政人とコマンドNが実施した伝説的なプロジェクトで、今回は路地裏の鉢植えの隙間を縫うように、アーティストたちの彫刻作品が鉢植えに「擬態」しながら、まちのスキマ空間を豊かに彩ります。
協賛:三井不動産株式会社

*本作品はエトワール海渡リビング館 入り口近くでの展示となります。
私は日頃、街を歩きながら、看板に残る貼り紙や文字、ストリートアートの名残、それらが色あせていく様子に美しさを感じています。そこには人々の行為の痕跡が幾重にも刻まれ、ときに美術史を想起させる魅力があります。たとえば抽象絵画のような色彩や構図、また「デコラージュ」の技法のように、貼る・描く・剥がす・消す行為が重なり、無意識のうちにひとつの画面が生まれることもあります。
もちろん、それらを「汚れ」として受け止める人もいるでしょう。しかし、もしこうした看板が美術館に展示されていたら、人はそれを作品として眺め、美を見いだすかもしれません。
今回は街にプランターを置き本物の花を植え、そばに看板を添えます。その看板に、使い込まれた痕跡を絵の具で模写し、行為の痕跡や無意識の積層を絵画として表現します。街に紛れる小さな仕掛けが、通りすがりの人に静かな違和感と発見の喜びをもたらすことを願っています。

ビルのすきま、植木鉢の葉が揺れ、線材が共振する。振動する輪郭が、見えない風の形をなぞり、都市の呼吸を知らせている。

かつて日本の水辺に暮らし、人々に親しまれながらも姿を消した「ニホンカワウソ」。その存在は絶滅したと考えられ、この世界から失われた絶滅種としてのみ、私たちの記憶の中で生き続けています。
本作品は、日本橋川から程近い日本橋室町という都市の中心において、もしも植栽の間からふいにカワウソが姿を現したなら——という「予期せぬ出会い」をカタチにしたものです。陶芸による彫刻作品によって、都市に潜む自然の気配を召喚し、失われた命との想像上の遭遇を目指します。思いがけずこの小さな存在と目を合わせたとき、都市の日常風景が現在〜江戸〜それ以前へと続くここに生きる物語を帯び、自然と共にある我々の未来を考えるきっかけとなることを望みます。

都市開発により高層化する無色透明なビル群。街区内の路地に立つと、そこは相対的に低く、暗く、日本橋の街はまるで地の底に沈んだようだ。五街道の起点、人や物の集積地として町人長屋や露店、魚市場や倉庫などが立ち並び活気あふれる日本橋は、明治以降百貨店や銀行の進出により商業・金融地としても発展を続けた。
しかし、関東大震災や東京大空襲を経て、高度経済成長期の首都高速の上空敷設など、街の歴史的な佇まいは戦後大きく変化してきた。どの場所にも今に至るまでに辿ってきたそれぞれの経路があり、それなしで現在の姿を語ることはできない。かつて日本一と呼ばれたその街並みを見ることはもはや難しいが、江戸の地割が生み出した都市の隙間は今もぽっかりと存在し続け、それは人間の時間を超えて生き続けている。私たちは、かつて日本橋の街を構成した建物をかたどった焼き物を製作し、街の様々な隙間に並べることで過去を想う。

公園や路地の隅、植木鉢の脇、小さな石のたまり場などに、輝く小さな石のオブジェをさりげなく配置します。それはまるで「ただの石」のようでありながら、どこか気になる形や質感を持っていて、目を留めた人にふと「もしかして……?」と思わせる存在。
「これは、トリケラトプスの目の化石かもしれない。」
そんな子どもの頃の妄想や他愛のない会話が思い出されるような、想像の余白を与える作品です。

とうきょうと、にほんばし、ガリガリ山のパン屋さんと、つねこさんが、階段のぼって、こーちょ、こちょ。手と腕は、日本橋の街並みになりました。指と指の間には路地があります。小さな路地には、産毛が生えるように、鉢植えの植物が寄せ合って生えています。よく見ると、目が出ています。毛穴が光るように、しっとりと艶を宿して、こちらをじっと見ているようです。産毛が健やかに育つように、支柱を建てネットを被せましょう。芽を大切にすると、遠くの方までよく見渡すことができます。そこからは何が見えるでしょうか。この腕の階段はどこに続いているでしょうか。

右から:《萬葉草奔 野不為馴(Plantation I)》、《萬葉草奔 囿外之境(Plantation II)》
本作は、路地という存在そのものを小さな「鉢植え」へと転位させる試みです。下町の路地裏に潜む雑多な造形や重層的な時間を鉢として再編し、決して一元化されることのない都市の断面を浮かび上がらせます。
鉢には、金継ぎ・鎹継ぎ・呼び継ぎといった異なる修復技法を交錯させ、陶片やコンクリート、石材、プラスチックなど多様な断片を縫合しています。こうした技法と素材の混淆は、複数の異文化や異時代を併置し、さらには、石畳やルーバーのリズムと変調や揺らぎ、高架下の陰影、建築を縁取る水切りなど、覇権的に規定された視覚秩序からこぼれ落ちてしまう都市の姿をも写し取ります。
寄せ植えには、観賞用として輸入された外来種や在来種、その交配種、さらには雑草と呼ばれる植物までもが、競合関係の中でひとときの共生を見せ、馴致されることのない生きた路地裏の野生性を宿しています。

マップ

東京科学大学(旧東京工業大学)建築学系教授でアトリエ・ワン共同主催の塚本由晴と、塚本研究室出身の大山亮、片山果穂、笹木聖、渕野剛史、増井柚香子、宮崎陸による建築コレクティブ・6lines studioの協働企画。塚本が一般社団法人「小さな地球」理事の一人として2019年から取り組む里山再生活動に6人が合流し、「里山タイニーハウス滴滴庵」建設を機に6lines studioとして活動を開始した。
日本橋・馬喰町エリア
日本橋室町・本町の路地裏
千葉県生まれ。2009 年東京芸術大学大学院美術研究科修了。西洋名画の登場人物を本から切り取り、現代の風景と組み合わせたコラージュと油絵の作品『タイムリープシリーズ』等を制作。近年の主な個展に、「中之島を、歩くひと」(YOD Gallery、大阪、2022年)、「Landscape」(オークウッドアパー トメンツ六本木セントラル、2020年)などがある。WATOWA ART AWARD(2021年)、シェル美術賞(2020年)、「15th TAGBOAT AWARD 」入選(2020年)。
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エトワール海渡リビング館
身の回りのささやかな出来事をシンプルな現象で再現するキネティック作品と、素材や図案の出会いに物語を生みゆるやかに響きあう手法を使う。主な個展に「岩竹理恵+片岡純也×コレクション 重力と素材のための図鑑」(神奈川県立近代美術館鎌倉別館、2025年)、「二つの心臓の大きな川」(アーツ千代田3331、2019年)、主な参加展に「開館30周年記念 MOTコレクション 9つのプロフィール 1935→2025」(東京都現代美術館、2025年)、「瀬戸内国際芸術祭2022」、「BankART Bank Under 35」(BankART Studio NYK、神奈川、2017 年)などがある。
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日本橋室町・本町の路地裏
1980年、群馬生まれ。「アーティストは、自由の体現者であるべきだ」という考えを持ち、特定の表現スタイルにこだわらず、彫刻や絵画、ビデオ、パフォーマンス、映画、ワークショップなど、あらゆる表現方法で意欲的に制作活動を続けている。
日本橋・馬喰町エリア
日本橋室町・本町の路地裏
撮影:梶原あずみ
アーティスト6名によるコレクティブ。メンバーは宮崎直孝、松本直樹、西浜琢磨、田中丸善一、大久保あり、瀧口博昭。2009年「ミルク倉庫」として発足後「ミルク倉庫+ココナッツ」として活動を展開。2024年に大久保ありを迎え、2025年より現名称に。異分野を横断する「よろず屋」的な実践を通じ、物質と身体、意識とインフラの関係を再考する。主な展示に「あいち2022」(愛知芸術文化センター)、「東京計画2019」(gallery αM)など。
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日本橋室町・本町の路地裏
撮影:仲世古佳伸
2010年、当時の山本現代で初個展「Can’t help falling in love」を開催し、翌年には横浜トリエンナーレ「OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?」に参加。2020年に4mに達するエルヴィス・プレスリーをモチーフにした作品を10年ぶりの個展「Ba de ya」(PARCEL、東京)で発表。2022年にはPARCELからFrieze SeoulのAsia Focusセクションにて個展形式で参加した。2023年、オーストラリアのビクトリア国立美術館でのNGVトリエンナーレ2023に参加。2024年には近代を代表する彫刻家、荻原碌山の生地にある碌山美術館にて個展を行う。現在は5mを超える作品を制作している。
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日本橋室町・本町の路地裏
寺内は金属を用いて、自身の内にあるイメージや記憶がディフォルメされ、都市、自然物、持ち物などが鋳金技法を通じて絡み合い変化していく作品を制作している。主な個展に「The Rendezvous with the Senation」(GINZA SIX 銀座蔦屋書店、2024年)、「ねんどのへや」(CREATIVE HUB UENO “es”、東京、2024年)、「JUMBLE DIVE」 (Bohemian’s Guild CAGE、東京、2023年)、参加展覧会に「第71回東京藝術大学卒業・修了作品展」(東京藝術大学大学美術館、2023年;買上作品認定)がある。
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日本橋室町・本町の路地裏
1981年東京生まれ。2006年 東京藝術大学院修士課程終了。身体と風景の関係を軸に、映像や立体、ドローイングなどを組み合わせた手法で作品を制作。最近は、伸びたり縮んだり、現れたり消えたりする、柔軟で交換可能な存在のあり方について考えている。個展に 「花と馬、会話」(Art Center Ongoing、東京、2024年)、参加展覧会に「瀬戸内国際芸術祭」(香川県粟島、2013・2016年)、など。
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