JA
EN
TOP

展示

EXHIBITIONS

開催期間中

開催前

終了

上野・御徒町エリア

  • 彫刻・立体

藤原信幸:ガラスを使って自然を表現する「植物のかたち」2025

藤原信幸は「いきもの」のかたちに魅力を探り、これらをモチーフとして繊細かつダイナミックなガラス造形作品を生み出します。彼のガラスへの関心は、光がもつ環境に与える力を感じとり、光がつくる空間の可能性を追求することにつながっています。その長いキャリアを通じて、彼はガラス表現の可能性をめぐる探求と葛藤を繰り返しながら、これらを象徴的な「かたち」に変換しようと試みています。   今回はその実践から生まれた作品群が、寛永寺の空間と呼応するように展示されます。2009年頃から制作を始めた〈小文間の植物シリーズ〉は、自身の工房がある茨城県取手市、利根川流域の小文間(おもんま)に自生する植物の生命力に触発された作品群です。自然の中にある生命サイクルを身近に感じながら、植物の断片的なイメージを独自に組み合わせて再構築したものです。これらが創建400年を迎える寛永寺で再構成され、新たな空間イメージを創出します。   特別協力:東叡山 寛永寺 協 力:東京藝術大学
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 東叡山 寛永寺 貴賓室
  • 写真

小瀬村真美:風景畫 — 葵の間、東叡山寛永寺

小瀬村真美は、古典絵画を現実の事物を用いながら写真・映像表現として再現することで、絵画の裏に視点を差し込もうとする独特な制作手法を展開しています。   小瀬村は今回、東叡山寛永寺の「葵の間」に掛けられている一枚の油彩画に注目しました。これは、江戸の15 代将軍・徳川慶喜が描いた《西洋風景》(1887–97)の複製だとされます。慶喜は1867(慶応3)年に政権を天皇に返上する「大政奉還」を行いましたが、1868年2 月12 日から同年4 月の江戸城の無血開城まで約2か月間、この場所で謹慎生活を送ったとされています。その後に描かれた《西洋風景》は、歴史人の筆による絵画として貴重なだけでなく、当時の日本画と西洋絵画の技法が交錯する作品であり、変革期の美術を映す貴重な存在でもあります。   小瀬村はこの《西洋風景》、および同時期に慶喜が描いた《日本風景》(1870頃)を手がかりに写真作品を2点制作し、葵の間に展示します。そこでは、歴史的な空間と絵画の記憶が現代のアーティストによるアプローチで重ね合わせられ、新たな体験が創出されるでしょう。   特別協力:東叡山 寛永寺 協力:東京藝術大学
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 東叡山 寛永寺 葵の間(廊下)
  • 彫刻・立体

森 淳一:星翳

森淳一は彫刻、セラミックや写真、油彩などにより、光と影が繊細に交錯するような緊張感あふれる作品を生み出します。これまで、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた水流や毛髪などの素描を元に大理石や柘植(つげ)の木で制作した彫刻シリーズや、故郷の長崎の原爆をテーマとする作品などを制作してきました。   今回は東叡山 寛永寺の渋沢家霊堂前庭にて、森が2025年春に開始した彫刻シリーズ〈星翳〉の最新作を発表します。シリーズの発端は、アルベルト・ジャコメッティの多面体の彫刻《キューブ》(1933–34)と、デッサン《月を思わせるもの》(1933頃) だといいます。森は《キューブ》の形態の意味を読み取ろうといくつかの多面体を制作しました。手がかりを得られぬまま手を加え続ける過程で、不意に現れたのが《星翳・初層・キューブ》(上写真)です。   作家によれば、ここでいう「星」とはジャコメティが《月を思わせるもの》で描いた、暗闇に浮かぶ仮面のような存在に近いものだとされます。今回は、星にまつわる森自身の体験をもとに新たに7点を制作。「それぞれの像を結び付ける何か(星座のような)が現れること」を期待しながら生み出された作品です。   特別協力:東叡山 寛永寺 協力:東京藝術大学
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 東叡山 寛永寺 渋沢家霊堂前庭

  • 彫刻・立体

黒川岳:石を聴く

一見すると大きな石塊に見える作品《石を聴く》には、私たちの頭が入るくらいのサイズの穴があります。そっと頭を入れてみると、風の音、周囲の声や音など、環境が奏でる音が響いています。それは作品の置かれた場所や状況によっても変わってくるでしょう。   本作のタイトルは、彫刻家のイサム・ノグチの言葉「自然石と向き合っていると、石が話をはじめる」も連想させます。一方で黒川は、物体や環境と身体との関係に着目しながら、彫刻やパフォーマンス・音楽などを制作するアーティストです。この展示では、外部からの鑑賞のみが許されることの多い彫刻作品が、鑑賞者がその内部でじっと耳を澄ませる作品にもなります。両者を往来する経験は、私たちが生きる環境について感じ直すひとときとなるでしょう。   今回は、寺院の境内と街中の店舗跡という、性格の異なる場に本作が設置されます。また、寛永寺 開山堂(両大師)の庭園内にある寝釈迦石(ねじゃかせき)の「穴」(既にあったものを作家が見つけた)でも、同様に頭を入れて音を聴くことができます。   本作品は複数会場で展示されます。詳しくは「会場」「日程」欄をご覧ください。 会期中には黒川の企画によるワークショップ「街のかたたたき」も開催します。   特別協力:東叡山寛永寺 協力:東京藝術大学、神谷氷店 *黒川岳は「看板建築プロジェクト」参加作家です。  
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / ① 東叡山 寛永寺 根本中堂前 ② 東叡山 寛永寺 開山堂両大師 ③ 神谷氷店
  • サウンドウォーク

鈴木昭男:「点 音(おとだて)」in 東京ビエンナーレ 2025

日本におけるサウンド・アートの先駆的な活動者として知られる鈴木昭男は、1960年代より、音と場の関わり方を探求する姿勢によって、「自修イベント」やパフォーマンス、インスタレーションなどを国内外で展開してきました。今回は、鈴木の幅広い活動の中でも特に「聴く」ことにフォーカスした代表的なプロジェクト「点 音(o to da te)」を、都内 6か所で実施します。   「点 音」は、茶の湯の野点(屋外で行う茶会)のように、参加者が定められた場所(ポイント)で風景を感じながら耳を澄まして感覚を開くプロジェクトです。それぞれのポイントは、鈴木が自らまちなかを探索して、ユニークな環境音や反響音が聴ける場所を探し出したものです。   こうして選ばれたポイントには、佇みを誘う足跡の形と、聴くことを即す耳の形からなるマークが敷設されています。歴史ある寺院の境内にある老樹に向き合うものや、美術館やギャラリーの多い賑やかな通りの周辺など、参加者はマップをもとにそれらのポイントを訪ねます。ひとり静かにマークの上に立つと、聴覚意識がスイッチオンし、その時々の巷の音に耳を澄ます体験ができます。そこでは私たち誰もが「聴く側にも、作曲者にもなれる」、そうした能動性のある時間を過ごすことになるでしょう。   特別助成:公益財団法人石橋財団   » 鈴木昭男インタビュー:耳で都市を感じる「点 音(おとだて)」
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / ① 東叡山 寛永寺 根本中堂前 ② 不忍池辯天堂 ③ 松坂屋上野店周辺 ④ 末広町駅周辺 ⑤エトワール海渡リビング館周辺 ⑥ 京橋彩区(アーティゾン美術館/TODA BUILDING)周辺

日本橋・馬喰町エリア

  • インスタレーション
  • その他

L PACK.:Totes my GOATs

L PACK.(エルパック)は小田桐奨と中嶋哲矢によるユニットです。二人は共に1984年生まれ、静岡文化芸術大学空間造形学科卒。アート、デザイン、建築、民藝などの思考や技術を横断しながら、最小限の道具と現地の素材を臨機応変に組み合わせた「コーヒーのある風景」をきっかけに、まちの要素の一部となるような活動や作品を展開しています。   今回かれらは、芸術祭でお馴染みのグッズであるトートバッグに着目します。芸術祭を訪れると、その名称やテーマ、キービジュアルが刻まれたバッグを肩に街を巡る人を多数みかけます。それらは芸術祭をめぐる際のお供として定着しており、それらを手にした観客が街を歩くことで、芸術祭の広報にもつながっています。さらに、ある種の非日常体験時に入手できる一方で、その後は日常使いが想定されているため、非日常と日常の間にある存在とも言えるでしょう。ただ、その多くが芸術祭の閉幕後にはクローゼットで眠ったままになっていないでしょうか。   散歩がテーマの本芸術祭にて、L PACK.は各地の芸術祭をささやかに支えるトートバックが一堂に会する場を生み出します。そこからは、時代や地域による芸術祭の主題やデザインの変遷なども見えてくるでしょう。バックを介して時や場所を横断する芸術祭の旅を楽しんでください。   ワークショップ「世界にひとつだけのオリジナル芸術祭トートバッグを一緒に作ろう!」も開催します。   特別協力:株式会社エトワール海渡
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館
  • インスタレーション

ピョトル・ブヤク:NO.W

ピョトル・ブヤクはポーランド出身の学際的アーティスト、独立研究者です。彼はアイデンティティ、政治、メディア、文化遺産をめぐる異文化分析などに関心を寄せ、その作品の多くは、DIYかつ低予算、即興的かつゲリラ的な手法でつくられます。本人はこれを「ミニマリスティック・パンク・コンセプチュアリズム」と呼んでいます。   《NO.W》は、1960年代後半のイタリアで起った前衛芸術運動「アルテ・ポーヴェラ」(貧しい芸術)に触発され、「視覚的俳句」のコンセプトを取り入れたインスタレーション作品です。それは公共空間と都市倫理の文脈において、住まい、安全、アイデンティティ、障害、無視、触覚などの概念を問い直す、曖昧ながら繊細な環境づくりを目指すものです。ブヤクはここでスペクタクルの概念を拒否し、シチュアシオニストやポスト構造主義的な反モニュメント思想にも遊戯的にもふれながら、この試みに挑みます。   本作は、小規模で、既存の私的な品々から構成されます。それは市民学、映像/視覚社会学や文化的アクティヴィズム、そして実験的人類学を結びつける、ブヤクの継続的なフィールドワークに基づくものです。これらはすべて学際的でリサーチ主導型のアート制作プロセスを通じて行われます。   特別協力:株式会社エトワール海渡
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館
  • インスタレーション
  • 映像

窪田 望:Inside Dementia

窪田望は経営者、AI 開発者、発明家、YouTuber、美術家など多領域で活動しています。美術家としては、AIのバイアス(偏向)やバグ、またインターネットが内包する構造(例えば公的な場におけるコンテンツの適切さ/不適切さの基準)に切り込みながら、本質的な未来のあり方を問いかける作品を手がけてきました。   今回は、自身が幼いころ祖母と過ごした記憶を起点に制作されたインスタレーションで参加します。窪田は祖母とこたつでみかんを食べながら、テレビで『笑点』を見る時間が好きだったといいます。本作ではその記憶を胸に、認知症の方へのインタビュー映像を上映したうえで、この症状において見られる「徘徊」(歩行・探索行動とも言われる)を疑似体験してもらう作品を制作しました。   「家に帰らなくちゃ」とは、介護施設で暮らす認知症(dementia)の方々がしばしば口にする言葉だといいます。その人が自らの言葉に従い外へ出て道に迷ってしまうとき、その行動は「徘徊」と呼ばれます。しかし実際は、自宅でもこの言葉が発せられることがあります。そこでの「家」とは「今・ここ」の家そのものではなく、記憶や感情の奥底にある別の場所かもしれません。私たちは町を「徘徊」しながら、何を感じるでしょうか。   特別協力:株式会社エトワール海渡
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館

  • インスタレーション

鈴木真梧:たち「止まれ」intoart_act01

鈴木真梧は、「マス」と「ミニ」双方の視点から、社会と個人の関わりについて問いを提示するアーティストです。例えば東京ビエンナー2020/2021で取り組んだ「スイート・デモクラシー」(2020年)では、子供たちが主体的に社会を育てていくシミュレーションの場をつくる[1/2選挙権]プロジェクトを実施。同時に、国会議事堂を思わせる角砂糖製の模型を小さなアリたちが食べていく作品「蟻事堂」を展示しました。   鈴木は今回、私たちが街を歩く際によく出合う路面標示「止まれ」に注目します。彼はそのシンプルなメッセージが日々、誰かに何かを訴えかけているようにも感じると言います。   それは、週末だけが楽しみな社畜生活への警告なのか? または、期待はずれでも信じ続けてきた政府への不信感なのか? 横並びを学び、いざ社会へ出ると個性的であれという教育に対してなのか? 広がる地域や貧困の格差、または止まらぬ少子化に対してなのか?   さらに鈴木は、そんな毎日を癒すことができるものの一つがアートかもしれないとしつつ、「でも日常を変えてくれるのは、私たち自身が変わろうとする視点です」と語ります。そしてこの路面標示を前に、深呼吸をして街からのささやかなメッセージに耳を傾けることを考えました。それは、今一度たち止まって思慮深く世界を眺めたうえで、一歩前へ進むことの重要性を教えてくれるかもしれません。会場では以下の方針による展示が行われます。   「止まれ」を愛で、記録する。 ささやかな「止まれ」のメッセージを真摯に受け止める。 ささいな「止まれ」の違いに気づき鑑賞する。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館
  • インスタレーション

チュオン・クエ・チー/グエン・フォン・リン:BREATHE

ハノイを拠点とするチュオン・クエ・チーとグエン・フォン・リンは、2021年から共同制作を始めました。チュオンは日常の風景や素材に宿るリズム、比率、空間性を繊細に読みとく作品を展開し、グエンは映像や彫刻、インスタレーションを通して時間、身体、記憶の層を探ります。   《BREATHE》は彼女たちの新たなインスタレーション作品です。互いに結びつく2つの作品が呼応し合い、素材間の対話や身体的探究を展開します。本作は生き物のように立ち現れます。赤いスポンジ状の小片で表面を覆った布が波打つように舞い、籐の木の幹が踊るように回ります。自転車のサドルがひとりでに跳ね、送風管が金属棒を叩き、子ども時代の写真を映し出す鏡はメリーゴーランドのように回ります。女神の木像の頭部が床の丸鏡に横たわり、そしてそこには、二人それぞれの父親の古いコートがあります。   その空間は、自律的に循環する機械的な身体となります。表面と線。皮膚、肉、血管、髪のような何か。心臓と肺のリズム。血と空気。骨と筋肉。それぞれの彫刻的要素は、独自の呼吸パターンをもつ空間で瞑想するかのような、集合的な振り付けを構成します。そうして本作は記憶の残響を抱えつつ、静と動、優しさと暴力、変容と反復、圧縮と解放のあいだで相互作用を生み出していきます。   助成:国際交流基 特別協力:株式会社エトワール海渡 テクニカルチーム:グエン・ニュー・バック、グエン・タン・ロン、レー・クアン・ミン、Studio Articulate Special Thanks:Hop書店, Đỗ Thanh Lãng, Ba-bau AIR
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館
  • インスタレーション

渡辺英司:名称の庭 / エトワール海渡インスタレーション

渡辺英司は、図鑑の植物や生き物の図像を切り取り、実空間に無数に配するインスタレーションで知られています。また世界各地での作品発表に加え、様々な場所でアートスペースを自らの手で作り続け、若手アーティストや海外アーティストをそこに招き入れながら、多様なコラボレーションを実現しています。   今回の展示で中心となるのは、植物図鑑や蝶図鑑から図像を切り抜いて、床面や壁面に配置するシリーズ〈名称の庭〉の最新版です。同シリーズは1992年に始まり、様々な場所で展開されてきました。植物や蝶の図鑑では、さまざまな生物が観察者によって発見・命名・分類され、図版と共に記述されます。例えば、散歩道で出合った植物やキノコの名前を知り得たとき、初めて目の前のものが自分自身の中で名指しできるものとして現れ、個性として認識されるとも言えます。そうして確認された図版群を切り抜き、再度、異なる空間に「名付けられた庭」として再現するとき、私たちは新たな人間的自然を目の当たりにするでしょう。   会場ではさらに、同作とつながるようなフレーズを電球で表した作品《CATCH & RELEASE》の展示や、来場者が作品に関われるインタラクティブなしかけを計画しています。またワークショップ「ステッキ・ホース(お馬の杖)を作ろう!」も予定しています。   特別協力:株式会社エトワール海渡 協力:東京藝術大学
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館

  • インスタレーション
  • 写真
  • 映像

エルケ・ラインフーバー:都市のエステティシャン

エルケ・ラインフーバーは、ドイツのエルヴァンゲン(ヤクスト)出身のメディアアーティスト、教育者、研究者です。現在は香港城市大学クリエイティブ・メディア学部(SCM)准教授も務めています。彼女の作品は様々な表現方法とストーリーテリングの戦略を探求し、「いま、ここ」に複数の真実が並行して存在することを浮き彫りにします。     彼女の分身である 「都市のエステティシャン」(the Urban Beautician)は、公共空間へのさりげない介入やカメラに向けたパフォーマンスを通して、都市環境において見過ごされてきた細部を改善しようと試みます。彼女は誰も気に留めないものに注目し、パフォーマンスやインスタレーション、映像、写真を通じて表現することで、都市の断片に新たな息吹を与えていくのです。   関連イベント「都市のエステティシャンとの散歩」も開催します。   特別協力:株式会社エトワール海渡 *エルケ・ラインフーバーは海外アーティスト公募プロジェクト「SOCIAL DIVE」参加作家です。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館
  • 参加型プロジェクト

アダム・ロイガート:フォー・ザ・パブリック — 散歩

アダム・ロイガートは、デンマークとスウェーデンを拠点にするランドスケープ・アーキテクト、アーティスト、プレイスメーカーです。子どもや若者が自らの周囲の環境づくりに参加できるスタジオ「BY RUM SKOLE」 の共同設立者でもあります。   「フォー・ザ・パブリック」は、都市の中で忘れ去られ、見過ごされがちな場所の活性化を目的とした継続的なプロジェクトシリーズです。観客を直に巻き込み、都市空間を探索し、ファシリテーターによる介入を通じて、そうした空間を再解釈するパフォーマンス作品でもあります。   プロジェクトは、参加者が現場で組み立てる小さな構築物の材料が置かれた場所からスタートします。その材料とは、建設用の資材、旗、工具、そして持ち寄る食べ物などです。参加者はパレード形式で現場まで案内され、進んでいきます。人々はそこで一時的なイベントを開催します。終了後には構築物が参加者たちにより解体され、元の場所へ戻されます。これによってその場所は、発見されたままの状態に戻されます。この構築物の持続的な作用は、物質ではなく記憶として残されるのです。   関連イベント「フォー・ザ・パブリック−散歩:歩きながら一緒にひらく まちの広場」も開催します。   特別協力:株式会社エトワール海渡 *アダム・ロイガートは海外アーティスト公募プロジェクト「SOCIAL DIVE」参加作家です。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館
  • インスタレーション

カミラ・スヴェンソン:パレスホテル東京

カミラ・スヴェンソンは、ブラジルのサンパウロを拠点とするマルチディシプリナリーなアーティスト、写真家です。写真、映像、オブジェを用いた表現などを幅広く手がけ、人間、記憶、場の関係性、そしてそれらが時間とともにどのように変化していくかを探求しています。しばしば参加型の手法を取り入れ、共同体験や共有された物語を生み出すプロジェクトを展開しています。   今回のプロジェクト「パレスホテル東京」は、スヴェンソンがブラジルの古本屋で偶然見つけた、東京の観光ガイドブックを起点に展開します。その本は1961年に建設された千代田区の「パレスホテル」開館時に編集されたものでした。このプロジェクトでは同書が、時を経て都市の歴史的・建築的・情緒的変容を探る出発点となります。   アーティストは東京に訪れ、ガイドブックを参考に、現存する場所、変化した場所、または完全に消えてしまった場所を探訪します。そして写真、映像、文章、オブジェの収集を組み合わせ、当時のガイドに記された行程を通じてこの都市を再構築・再想像していきます。これらの散歩は、記録であると同時にパフォーマンスでもあり、東京の物理的・文化的変化をなぞる行為となります。   展示では、プロジェクトの制作プロセスをインスタレーション形式で展示予定です。スヴェンソンはリサーチと解釈を織り交ぜ、アーカイブと現実を交錯させながら、記憶と変化、観光と生活体験、そして折り重なる個人史と集合的記憶の緊張関係を探ります。本プロジェクトは、ふたつの都市と、ふたつの時間軸の間に成立する対話となるでしょう。   関連イベント「想像の東京ガイド:都市を書き換えるワークショップ」も開催します。   特別協力:株式会社エトワール海渡 *カミラ・スヴェンソンは海外アーティスト公募プロジェクト「SOCIAL DIVE」参加作家です。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館

  • 写真
  • 参加型プロジェクト

マリアム・トヴマシアン:サンウォークス ― サンポ

マリアム・トヴマシアンは、アルメニア出身、ロンドン拠点のヴィジュアル・アーティスト、イラストレーターです。彼女はイメージと言葉の組み合わせを通じたビジュアルストーリーテリングへの情熱を抱き、作品に用いるメディウムと彼女自身の創造力、双方の限界を超えるような実践の可能性を探っています。壮大なアイデアと、ごく普通の若い女性としての経験との対比から生まれるトヴマシアンの作品は、どこか風刺的で、ときに詩的な物語になります。それらの作品のテーマは、この世界における経験から生まれる、個人的または存在論的な問いへの応答だと言えるでしょう。   今回の「サンウォーク ― サンポ」は、東京在住の人々を招き、都市や互いとの出会いのフィジカルな痕跡をサノアノタイプ(青写真)によって写し取る参加型のアートプロジェクトです。日光で印画することができるサノアノタイプは、19世紀に発明された写真方式です。このプロジェクトでは、日光と時間を主な素材として用いながら、急速に変化し、しばしば断絶もみられる都市環境において、静けさ、無常、そしてつながりを探求します 。参加者は、共有された「静けさ」の記念品として、1枚の写真を持ち帰ります。それぞれの写真についてもう1枚が、展示会場で成長し続けるサイトスペシフィックなインスタレーションと小冊子にアーカイブされていきます。   関連イベント「サンウォークス:散歩サイアノタイプ・ワークショップ」も開催します。   特別協力:株式会社エトワール海渡 *マリアム・トヴマシアンは海外アーティスト公募プロジェクト「SOCIAL DIVE」参加作家です。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館
  • インスタレーション
  • 映像

ナラカ・ウィジェワルダネ:偶発の足跡 — 東京の「想像を絶するもの」マッピング

ナラカ・ウィジェワルダネは、スリランカの映画監督、ビデオアーティストです。彼はポストコロニアルな記憶、表象、そして映像の感覚的な力をテーマに作品を制作しています。   ウィジェワルダネは今回、都市空間を思索的な風景へ変容させる多画面の映像インスタレーションに取り組み、偶然性、不在、人間を超えた実在などのテーマを探求します。本作は哲学者のカンタン・メイヤスーによる概念「ハイパー・カオス」をもとに、5つのインスタレーション「因果の不在」「存在論的残骸」「あなたを忘れる都市」「起源なき残響」「思考を超える間隔」によって展開されます。   非同期的な映像投影、場固有のサウンドスケープ、センサー駆動のインタラクション——。これらを通じて直線的な物語は解体され、私たちは東京を記憶、因果関係、人間中心性から解放された都市として新たに体験します。そこでは日常の空間、物体、音が解釈を拒み、慣れ親しんだ「意味」を溶解させる自律的な存在として再構築されます。変化する光、ずれた音、断片化された映像が交錯する連続的な空間体験は、訪れた者を不安定な知覚の領域に浸らせてくれます。それは都市の不可知なリズムへの瞑想であり、人間中心の物語を超えた都市環境を再考する呼びかけとなるでしょう。   関連イベント「想像を絶するもの」を考える:サイレントウォーク・ワークショップ」も開催します。   特別協力:株式会社エトワール海渡 *ナラカ・ウィジェワルダネは海外アーティスト公募プロジェクト「SOCIAL DIVE」参加作家です。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館
  • 写真
  • その他

写真プロジェクト「Tokyo Perspective」

7組の写真家、アーティストが東京を歩き、「まちの今」を写真作品化。そのオリジナルプリントを特設会場(エトワール海渡リビング館)で展示するほか、ネット上のデジタルマップでも公開し、人々が撮影地点に訪れて実際の風景に対峙できるプロジェクトです。さらに、セブン-イレブン各店舗のマルチコピー機で手軽にプリントできる仕組み用意し、新しい写真鑑賞やコレクションの楽しみ方を探ります。   協賛:富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 特別協力:株式会社エトワール海渡     参加アーティストより 畠山直哉 《#3418》(シリーズ〈山手通り 2008年〉より)   「散歩」   電車に遅れまいと急いだり、スマホ片手にスーパーに向かったりしている時、僕たちは自分が「歩いている」ということを忘れて歩いている。周りのことも最小限しか見えていない。   いっぽうで、自分が「歩いている」ことが、よく意識される場合がある。脚が痛くなったとか道に迷ったとか、不測の原因によることが多いが、時にはそれに伴って「なんで歩いてるんだっけ?」とか「歩いてるって、どゆこと?」などという、普段とは異なる疑問が湧いてきたりもする。   「散歩」とはたんに歩くことではなく、そのような「歩いている」状態に、自らの身をあえて置くことである。散歩の魅力は「歩いている」状態がもたらす刻一刻の、知覚経験の豊富さの中にこそある。散歩のあいだ、目に映るものは分け隔てなく、しかも普段とは異なる説得力をもって迫ってくる。僕たちは現実空間の中を、現象学的と呼んでもよいくらいの濃密な知覚や身体意識と共に歩くのだ。まるで水の中を泳ぐようにして。 片山真理 《Tokyo / Ueno #001》2025年、発色現像方式印画© Mari Katayama, courtesy of Mari Katayama Studio and Galerie Suzanne Tarasieve, Paris   上野公園に立つと、進学して最初の授業で先生に投げかけられた問いと、そのときの緊張感を思い出します。「ここがどんな場所か知っていますか?」   人が生きる限り、歴史が作られていく。学生時代の私は道端の小石にさえ理由を探し求めるほど、あらゆる事象に説明を欲していました。だからなのか、いくら歩いても上野公園の道を覚えられることはなく、慣れないのです。   撮影には中判フィルムカメラを使っています。セルフポートレートを撮るときは長いレリ ーズでバルブ撮影を行いますが、シャッターを閉じるには手動でフィルムを巻き上げる必要があり、カメラのもとへ戻らなければなりません。その間に生じる時間差によって、私の身体は半透明に写ります。これはデジタル編集や多重露光の効果ではなく、物理的な撮影条件から生まれる現象です。透けた身体はコントロールできない景色や環境と一体化し、場所の模様として記録されます。   たまたま生まれた私たちが、人為的につくられた世界のなかで、どこまで調和を保てるのか、撮影のたびに考えます。人が作ったものは間違いに満ちています。   知らないこと、それから当然と思っていた価値観や基準を一度忘れ、改めて考え直すこと。上野公園での緊張は、私の撮影の原点なのかもしれません。 港 千尋 《red1》2025年(シリーズ〈URBAN RITUAL /Tokyo2025〉より)   〈URBAN RITUAL /Tokyo2025〉   東京は巨大都市(メガシティ)という形容が定着して久しい。「1000万都市」東京は1950年代にニューヨークを抜いて世界一となり、64年には2000万人を、85年に3000万人を突破、2020年にはついに4000万人を超えて世界一を突き進んでいるという。   行政区をまたいで延伸する都市圏は衛星画像からも確認できる。統計上の数字とはいえ驚くべきことだが、そこに住んでいる住民に「世界一」の実感があるのかどうかはわからない。人口密度が連続する集積地域(urban agglomeration)の内側は不均質な「地元」の積み重ねではないだろうか。   そんな「町」の一角を切り取りつなげて連続性のパターンを作ってみる。不均質な都市から取り出す地元文様の試み。今回は東京ビエンナーレが繰り広げられる神田川沿いの高低差を含んだ地形と、そこを通る動脈である電車をモチーフにした。庶民の遊び心が生んだ江戸小紋ではないけれど、メガシティならではの文様と言えるかもしれない。 中村政人   街を散歩していると、目に映し出される全ての風景を創りだしている制作者をイメージしてしまう。   「路上の石」があるとすると、アスファルトを敷き白線を引く道路工事者の行為の上に、誰かが運んできた石が路肩に息を潜めるようにじっとしている、と読み解く。ビル群のスキマに小さな一軒家を見ると、戦後の焼け野原に木造建築を建てた棟梁達の技術や考え方と、型枠にコンクリートを流し込んでビルを建てる建築のサスティナビリティを比較するように見てしまう。   私は、行為の連続性から創造される「部分と全体」の因果関係を、作品やプロジェクトを通して表現してきた。釘一本の意思と、東京という都市の意思。部分を創り出す創造力と、都市を構成する全体の創造力は、人間社会や地球環境にいかなる関係を築いているのか? その関係項に私がひとつの行為を加える事で、部分と全体の関係は、どのように変化するのか?   今回の写真制作においては、風景を構成する部分と全体の関係をひとつの表現体として捉えている。そしてその表現体を見つめる私の視線を黄色いボールに置き換え、風景全体に新たな部分として介入する試みである。   *室内から撮影した場所が3か所あります。その場所に入るためのルールは、ウェブサイトやマップに記載します。 SIDE CORE 《INVISIBLE PEOPLE》2025年(シリーズ〈underpass poem〉より)   〈underpass poem〉   昔、神田に住んでいました。よく散歩をしていましたが、気になるけれどあえて立ち止まって見ることがなかった場所があります。それが首都高上野1号線の高架下です。   首都高1号羽田線の歴史は古く、高架下のガードレールや柱に排気ガスのススが長年降り積もって、真っ黒になっています。最近の車はそんなに多くの排気ガスを排出しないので、今となってはただ汚い高架下に歴史を感じてしまいます。また場所によっては誰かが指で書いた落書きがちらほらと点在していて、渋滞時よくそれを眺めていました。   意味不明な落書きが多いのですが、よく見れば中央分離帯など人が歩かない場所にかかれているものもあり、意外な作為性があります。今回、久しぶりに神田を訪れて散歩をしたとき、私たちもススを指で拭って詩を描いてみました。一見簡単そうに見えるのですが降り積もったススが固まっていて、一本の線を引くことすら難しく、手も服も真っ黒になりました。触れてみて初めてわかる街の姿があるのだと思います。もし、場所を探しに散歩してもらえるのであれば、皆さんもぜび触ってみてください。 鈴木理策 《日本橋室町・東を望む》2025年   東京の写真は東京生まれの人が撮ったものが面白い、と学生の頃に聞いたことがある。変わってしまった風景に撮影者が思い出を投影するからだろうか。他所で生まれた人よりもシャッターを押す理由が多くあるということなのか。   写真の作業を「撮影」と「撮影の後で撮った写真を見ること」に分けて考えてみる。出来上がった写真を見る時、そこに撮った理由が表れていると、撮影者の思い出や感情を想像し、気持ちを重ねることができる。写真は、実際にシャッターを押した時に生まれるのではなく、もっと遡った時間、撮影者の過去の経験や記憶から生まれる場合も多い。複層的な時間をそなえていることは写真の魅力のひとつだと思う。   では撮られた写真からは何が生まれるか? そこから始めることはできないかと考えた。対象とカメラの距離が写真の種類を決定することは経験上心得ている。だが手法が導く効果の道すじから離れて、東京を撮影してみたいと考えた。 豊嶋康子 〈Backshift 2025〉シリーズより   〈Backshift 2025〉   東京ビエンナーレ2025の開催エリアには、過去に私が個展をした場所が複数含まれている。「犯人は現場に戻る」という俗説に沿うかのような、あるいは帰巣本能に促されるような気持ちで、しばらく行くことがなかったその場所を訪ねてみる。   かつて短期間だったが自分の作品を置いた記憶は鮮明で、まだその時のストレスは続いている。当時は作品を展示する空間になるべく、壁を塗り、照明に苦心した小さな経験の場だったが、今は建物や土地という不動産としての別の相がみえる。いつその場と関わったかということ、そして今回もその場を見にいったということ。この空間に個人的に関わる2点の事実を、時間軸を通して文章のように結びつけるために撮影という方法を選んだ。   建物は35年前と変わらずにある場合もあれば、すでに取り壊されて駐車場になっている場合もある。共通していたのは、当時の関係者は現在その住所にはいないということである。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館

  • 参加型プロジェクト

さんぽアートマップ、考現学マップ

東京ビエンナーレ2025のテーマ「いっしょに散歩しませんか?」のもと展開される2つのマッププロジェクトについて展示を行います。   散歩を通して発見する、断片的で、多様で、感覚的な気づき。それは私たちが、周囲の世界の解釈を能動的に更新する手がかりになります。このプロジェクトでは「さんぽ大学」プロジェクトとも連動しながら、フィールドワークを重ねて東京の新しい「アートマップ」をつくります。これらはデジタルアートマップとしての公開に加え、エトワール海渡リビング館でも展示予定です。   特別協力:株式会社エトワール海渡   イラスト:高橋和暉   さんぽアートマップ 東京ビエンナーレ2025の展示情報のほか、開催エリアに点在するパブリックアート・文化施設情報などを収集したマップを制作する試みです。また、まちに潜む面白情報を収集する「これもアート⁈発見隊」は、SNSでハッシュタグ「#これもアート発見隊」と共に誰もが参加できる取り組みとします。   黒石いずみ   考現学マップ 日本橋・馬喰町エリアと八重洲・京橋エリア内で、考現学の視点により江戸から現代までの生活者の痕跡を読み込み、ストーリーを紡ぐプロジェクトです。 考現学は「考古学」に対し、現在の人々の生活文化を調査・研究する学問で、建築学・民俗学研究者の今和次郎(1888–1973)により提唱されました。現代人の暮らしの観察、筆記、撮影等により対象を調査・分析する考現学は、後の生活学、風俗学、社会学の発展にも貢献。さらに美術家の赤瀬川原平や建築史家の藤森照信らによる「路上観察学会」の活動にも影響を与えました。 今回は考現学研究の第一人者、黒石いずみ氏(福島学院大学教授)を中心に地域の人々と共に作成した考現学マップを制作。まちのディテール、人の動きを観察することにより、新たなレイヤーが浮かび上がります。   » 黒石いずみが語る「物語を感じる地図=さんぽアートマップ」
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館 オンライン(ウェブサイト)
  • 彫刻・立体

スキマプロジェクト/日本橋室町・本町

都市の構造を物理的、観念的な「スキマ」からとらえ、ビルの間のわずかな隙間(すきま)を作品発表の空間や作品そのものとして活用する試み。1999年に中村政人とコマンドNが実施した伝説的なプロジェクトで、今回は路地裏の鉢植えの隙間を縫うように、アーティストたちの彫刻作品が鉢植えに「擬態」しながら、まちのスキマ空間を豊かに彩ります。   協賛:三井不動産株式会社   ミルク倉庫ザココナッツ《萬葉草奔》2025年(コンセプチュアルイメージ[CG])   アーティストと作品 岩岡純子 Gar(e)den   私は日頃、街を歩きながら、看板に残る貼り紙や文字、ストリートアートの名残、それらが色あせていく様子に美しさを感じています。そこには人々の行為の痕跡が幾重にも刻まれ、ときに美術史を想起させる魅力があります。たとえば抽象絵画のような色彩や構図、また「デコラージュ」の技法のように、貼る・描く・剥がす・消す行為が重なり、無意識のうちにひとつの画面が生まれることもあります。   もちろん、それらを「汚れ」として受け止める人もいるでしょう。しかし、もしこうした看板が美術館に展示されていたら、人はそれを作品として眺め、美を見いだすかもしれません。 今回は街にプランターを置き本物の花を植え、そばに看板を添えます。その看板に、使い込まれた痕跡を絵の具で模写し、行為の痕跡や無意識の積層を絵画として表現します。街に紛れる小さな仕掛けが、通りすがりの人に静かな違和感と発見の喜びをもたらすことを願っています。 片岡純也+岩竹理恵 作品プラン   呼吸する裏路地   ビルのすきま、植木鉢の葉が揺れ、線材が共振する。振動する輪郭が、見えない風の形をなぞり、都市の呼吸を知らせている。 栗原良彰 カワウソ☆ ガイタヨ♡   かつて日本の水辺に暮らし、人々に親しまれながらも姿を消した「ニホンカワウソ」。その存在は絶滅したと考えられ、この世界から失われた絶滅種としてのみ、私たちの記憶の中で生き続けています。   本作品は、日本橋川から程近い日本橋室町という都市の中心において、もしも植栽の間からふいにカワウソが姿を現したなら——という「予期せぬ出会い」をカタチにしたものです。陶芸による彫刻作品によって、都市に潜む自然の気配を召喚し、失われた命との想像上の遭遇を目指します。思いがけずこの小さな存在と目を合わせたとき、都市の日常風景が現在〜江戸〜それ以前へと続くここに生きる物語を帯び、自然と共にある我々の未来を考えるきっかけとなることを望みます。 6lines studio+塚本由晴 日本橋のイエハニワ   都市開発により高層化する無色透明なビル群。街区内の路地に立つと、そこは相対的に低く、暗く、日本橋の街はまるで地の底に沈んだようだ。五街道の起点、人や物の集積地として町人長屋や露店、魚市場や倉庫などが立ち並び活気あふれる日本橋は、明治以降百貨店や銀行の進出により商業・金融地としても発展を続けた。   しかし、関東大震災や東京大空襲を経て、高度経済成長期の首都高速の上空敷設など、街の歴史的な佇まいは戦後大きく変化してきた。どの場所にも今に至るまでに辿ってきたそれぞれの経路があり、それなしで現在の姿を語ることはできない。かつて日本一と呼ばれたその街並みを見ることはもはや難しいが、江戸の地割が生み出した都市の隙間は今もぽっかりと存在し続け、それは人間の時間を超えて生き続けている。私たちは、かつて日本橋の街を構成した建物をかたどった焼き物を製作し、街の様々な隙間に並べることで過去を想う。 寺内木香 もしかしての石   公園や路地の隅、植木鉢の脇、小さな石のたまり場などに、輝く小さな石のオブジェをさりげなく配置します。それはまるで「ただの石」のようでありながら、どこか気になる形や質感を持っていて、目を留めた人にふと「もしかして……?」と思わせる存在。   「これは、トリケラトプスの目の化石かもしれない。」   そんな子どもの頃の妄想や他愛のない会話が思い出されるような、想像の余白を与える作品です。 戸田祥子 跳ね返る、目と芽と   とうきょうと、にほんばし、ガリガリ山のパン屋さんと、つねこさんが、階段のぼって、こーちょ、こちょ。手と腕は、日本橋の街並みになりました。指と指の間には路地があります。小さな路地には、産毛が生えるように、鉢植えの植物が寄せ合って生えています。よく見ると、目が出ています。毛穴が光るように、しっとりと艶を宿して、こちらをじっと見ているようです。産毛が健やかに育つように、支柱を建てネットを被せましょう。芽を大切にすると、遠くの方までよく見渡すことができます。そこからは何が見えるでしょうか。この腕の階段はどこに続いているでしょうか。 ミルク倉庫ザココナッツ 《萬葉草奔》2025年(コンセプチュアルイメージ[CG])   萬葉草奔 野不為馴(Plantation I) 萬葉草奔 囿外之境(Plantation II)   本作は、路地という存在そのものを小さな「鉢植え」へと転位させる試みです。下町の路地裏に潜む雑多な造形や重層的な時間を鉢として再編し、決して一元化されることのない都市の断面を浮かび上がらせます。   鉢には、金継ぎ・鎹継ぎ・呼び継ぎといった異なる修復技法を交錯させ、陶片やコンクリート、石材、プラスチックなど多様な断片を縫合しています。こうした技法と素材の混淆は、複数の異文化や異時代を併置し、さらには、石畳やルーバーのリズムと変調や揺らぎ、高架下の陰影、建築を縁取る水切りなど、覇権的に規定された視覚秩序からこぼれ落ちてしまう都市の姿をも写し取ります。   寄せ植えには、観賞用として輸入された外来種や在来種、その交配種、さらには雑草と呼ばれる植物までもが、競合関係の中でひとときの共生を見せ、馴致されることのない生きた路地裏の野生性を宿しています。 森 靖 《Power chord – Praying hands》2025年   Power chord – Praying hands   莫大な時間と重力などによってできた鍾乳石に、祈りのカタチを見いだした。 手を合わせる祈りのポーズは多くの宗教にみられる。僕は小さな頃、カメハメ波や波動拳が出るのではないかとよく「気」をためていたのを思い出す。 この石のように、長い時間をかけたのならば、想いはカタチになるような気がする。 水の力によって穴のあいた石を連想する都市の中の「手水鉢」に、長い時間をかけて水によってできた鍾乳石から制作した作品を設置する。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 日本橋室町・本町の路地裏
  • サウンドウォーク

鈴木昭男:「点 音(おとだて)」in 東京ビエンナーレ 2025

日本におけるサウンド・アートの先駆的な活動者として知られる鈴木昭男は、1960年代より、音と場の関わり方を探求する姿勢によって、「自修イベント」やパフォーマンス、インスタレーションなどを国内外で展開してきました。今回は、鈴木の幅広い活動の中でも特に「聴く」ことにフォーカスした代表的なプロジェクト「点 音(o to da te)」を、都内 6か所で実施します。   「点 音」は、茶の湯の野点(屋外で行う茶会)のように、参加者が定められた場所(ポイント)で風景を感じながら耳を澄まして感覚を開くプロジェクトです。それぞれのポイントは、鈴木が自らまちなかを探索して、ユニークな環境音や反響音が聴ける場所を探し出したものです。   こうして選ばれたポイントには、佇みを誘う足跡の形と、聴くことを即す耳の形からなるマークが敷設されています。歴史ある寺院の境内にある老樹に向き合うものや、美術館やギャラリーの多い賑やかな通りの周辺など、参加者はマップをもとにそれらのポイントを訪ねます。ひとり静かにマークの上に立つと、聴覚意識がスイッチオンし、その時々の巷の音に耳を澄ます体験ができます。そこでは私たち誰もが「聴く側にも、作曲者にもなれる」、そうした能動性のある時間を過ごすことになるでしょう。   特別助成:公益財団法人石橋財団   » 鈴木昭男インタビュー:耳で都市を感じる「点 音(おとだて)」
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / ① 東叡山 寛永寺 根本中堂前 ② 不忍池辯天堂 ③ 松坂屋上野店周辺 ④ 末広町駅周辺 ⑤エトワール海渡リビング館周辺 ⑥ 京橋彩区(アーティゾン美術館/TODA BUILDING)周辺

神田・秋葉原エリア

  • 彫刻・立体

黒川岳:石を聴く

一見すると大きな石塊に見える作品《石を聴く》には、私たちの頭が入るくらいのサイズの穴があります。そっと頭を入れてみると、風の音、周囲の声や音など、環境が奏でる音が響いています。それは作品の置かれた場所や状況によっても変わってくるでしょう。   本作のタイトルは、彫刻家のイサム・ノグチの言葉「自然石と向き合っていると、石が話をはじめる」も連想させます。一方で黒川は、物体や環境と身体との関係に着目しながら、彫刻やパフォーマンス・音楽などを制作するアーティストです。この展示では、外部からの鑑賞のみが許されることの多い彫刻作品が、鑑賞者がその内部でじっと耳を澄ませる作品にもなります。両者を往来する経験は、私たちが生きる環境について感じ直すひとときとなるでしょう。   今回は、寺院の境内と街中の店舗跡という、性格の異なる場に本作が設置されます。また、寛永寺 開山堂(両大師)の庭園内にある寝釈迦石(ねじゃかせき)の「穴」(既にあったものを作家が見つけた)でも、同様に頭を入れて音を聴くことができます。   本作品は複数会場で展示されます。詳しくは「会場」「日程」欄をご覧ください。 会期中には黒川の企画によるワークショップ「街のかたたたき」も開催します。   特別協力:東叡山寛永寺 協力:東京藝術大学、神谷氷店 *黒川岳は「看板建築プロジェクト」参加作家です。  
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / ① 東叡山 寛永寺 根本中堂前 ② 東叡山 寛永寺 開山堂両大師 ③ 神谷氷店
  • インスタレーション
  • 彫刻・立体

秋山珠里:出発準備

秋山珠里は蜜蝋を主材料とし、その歴史・文化・哲学的背景にふれながら、絵画と彫刻を横断する作品を制作しています。今回は、モルタル装飾が印象的な看板建築「角地梱包」にて、場の歴史に呼応する展示に挑みます。   関東大震災後の東京に現れたバラック建築に、当時の芸術家・村山知義はアヴァンギャルド装飾という芸術の場を見いだしました。また復興期の木造建築には、建物正面を銅板、モルタル、タイルなどの不燃材料で覆い、多様に装飾したものが現れました。後年、建築史家の藤森照信が「看板建築」と名付けたこれらの建物は、バラックのおおらかな装飾性と媒体性を受け継ぐようでもあります。   その後、東京は戦争で再び焼け野原になり、地価高騰を経て、いまや建築物は土地の「うわもの」とされるに至ります。一方で建物内に目を向ければ、日本建築史の中では、芸術は仮設的な屏風や障壁画などから、床の間という「領地」を獲得しています。   「仮設・常設・基礎」。秋山は今回、この流動的または創造的な関係性について、古くから表面性や仮設性の象徴である蜜蝋を用いて表現します。会場は現存する貴重な看板建築であると同時に、かつて梱包業という「出発準備」や「ここにいるがすでに出発している」という曖昧な境界を担ってきた場でもあります。   協力:角地梱包 *秋山珠里は「看板建築プロジェクト」参加作家です。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 角地梱包
  • インスタレーション
  • パフォーマンス

テントハウス・アートコレクティブ&オーブンネットワーク:その家は見た目より広い

テントハウス・アートコレクティブは、オスロを拠点に2009年から活動するアーティスト集団です。コミュニティとの関わり、共同性、包摂性を焦点に、プロセス重視の実践を重ねています。また、かれらが展開するオーブンネットワークは北欧と東南アジアのコレクティブをつなぎ、共に学び・考え、長期的な関わりを育むことを目指しています。   今回、かれらは神田の築100年近い看板建築・海老原商店を拠点とし、建物の歴史に着想を得たプロジェクトを展開します。「トランスローカル」の概念のもと、参加メンバーと地域コミュニティが関わり合いながら新たな場をつくり、固定概念を揺さぶりつつ、現在の課題を変容させていきます。   後援:ノルウェー大使館 助成:OCA, Globus Forward 協力:海老原商店 *テントハウス・アートコレクティブ & オーブンネットワークは「看板建築プロジェクト」および「海外連携プロジェクト」参加作家です。     プロジェクトは以下の要素で構成されます。これらを通じてコレクティブと地域コミュニティの知識や経験をつなぎ合わせ、過去の伝統を尊重しつつ、未来を変えていくための動きの場を生み出すことを目指します。     RRR OFFICE Research(調査)、Record(記録)、Report(報告)を行う仮設のオフィス的空間が会場に出現します。このプロジェクトは芸術活動において見過ごされがちな管理業務や運営、制作過程などに焦点を当て、重要な文化的行為ととらえます。プロジェクトの内省的な核として、現場で起こることを観察・記録しながら、来場者にも会話への参加や、質問のやり取り、記録やメモの提供などを促します。こうして集まった資料は増え続けるアーカイブとなり、記録そのものが創造のプロセスに積極的に関わる空間を生み出します。 また、会期中にオーブンネットワークによる「Sub-rent Program(サブレンタルプログラム)」を開催。カナダ、インドネシア、ノルウェー、タイなど、様々な国や地域からアーティストやコレクティブが会場に滞在し、来場者や地域との交流やワークショップを開き、クリエイティブな場として海老原商店を活性化していきます。   オフィス稼働日程:本ページ「日程」欄参照 Sub-rent Program(サブレンタルプログラム) 11月3日(木)〜6日(日) コレクティブ・コレクティブ(アートコレクティブ/カナダ) 11月13日(木)〜16日(日) ヘレン・エリクセン(テントハウス・アートコレクティブ/ノルウェー)、リリー・オンガ(タイ) 11月27日(木)〜30日(日) エバ・モイ&アンナ・カリン・ヘドベリ(テントハウス・アートコレクティブ/ノルウェー) 12月4日(木)〜7日(日) Grafits Huru Hara(アートコレクティブ/インドネシア) 12月11日(木)〜14日(日) Studio 150(アートスタジオ/タイ)   STIM – Kizuna テントハウスのシャフルザード・マレキアンとイーダ・ウヴァースが、新作パフォーマンス「Kizuna」を発表します。本作は海老原商店とその周辺で展開されるサイトレスポンシブな(=場に呼応する)作品です。パフォーマンスは身体性と動きを通したリサーチによって形作られ、共有されるリズムや存在感、注意深さ、そして映像としてそこに痕跡を残していきます。制作においてはパフォーマーも募集しました。 » 詳細・予約はこちら   各種アクティベーション ワークショップや議論型プログラムなど。下記「関連イベント」欄を参照。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 海老原商店

  • サウンドウォーク

鈴木昭男:「点 音(おとだて)」in 東京ビエンナーレ 2025

日本におけるサウンド・アートの先駆的な活動者として知られる鈴木昭男は、1960年代より、音と場の関わり方を探求する姿勢によって、「自修イベント」やパフォーマンス、インスタレーションなどを国内外で展開してきました。今回は、鈴木の幅広い活動の中でも特に「聴く」ことにフォーカスした代表的なプロジェクト「点 音(o to da te)」を、都内 6か所で実施します。   「点 音」は、茶の湯の野点(屋外で行う茶会)のように、参加者が定められた場所(ポイント)で風景を感じながら耳を澄まして感覚を開くプロジェクトです。それぞれのポイントは、鈴木が自らまちなかを探索して、ユニークな環境音や反響音が聴ける場所を探し出したものです。   こうして選ばれたポイントには、佇みを誘う足跡の形と、聴くことを即す耳の形からなるマークが敷設されています。歴史ある寺院の境内にある老樹に向き合うものや、美術館やギャラリーの多い賑やかな通りの周辺など、参加者はマップをもとにそれらのポイントを訪ねます。ひとり静かにマークの上に立つと、聴覚意識がスイッチオンし、その時々の巷の音に耳を澄ます体験ができます。そこでは私たち誰もが「聴く側にも、作曲者にもなれる」、そうした能動性のある時間を過ごすことになるでしょう。   特別助成:公益財団法人石橋財団   » 鈴木昭男インタビュー:耳で都市を感じる「点 音(おとだて)」
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / ① 東叡山 寛永寺 根本中堂前 ② 不忍池辯天堂 ③ 松坂屋上野店周辺 ④ 末広町駅周辺 ⑤エトワール海渡リビング館周辺 ⑥ 京橋彩区(アーティゾン美術館/TODA BUILDING)周辺

水道橋エリア

  • 絵画・ドローイング

ホガリー:Re-sortir/リ・ソルティール

「東京ドームシティ アートプロジェクト」は、東京ドームシティからアートの魅力を発信するプロジェクトとして、 東京ドーム、東京藝術大学、東京藝術大学芸術創造機構の三者によって2022年からスタートした試みです。   複合施設「ミーツポート」と東京ドームホテル間の水景エリアでは、2024年からHogalee(ホガリー)のウォールアートが出現しています。これは東京ドームシティが実施しているランドスケープリニューアル計画の一環で、アートを活用した空間創出として実現したものです。   水辺の壁面に現れた巨大な3人の女性像は、記念撮影の瞬間のような夕日や、南国のひとときを想起させるウォールアートであり、同時に、支持体となる階段壁が斜めに続く先へ拡がるようなインスタレーションでもあります。さらに鑑賞者との関係で言えば、目的地へと向かう通行人たちを、あえて脇道を選ぶ鑑賞者になるよう誘う、何度も訪れて(re-sortir)滞在できるランドマークアートでもあるのです。   事業パートナー:株式会社東京ドーム *この展示は東京ドームシティからアートの魅力を発信することを目指し、 東京ドーム、東京藝術大学、東京藝術大学芸術創造機構が2022年に開始した「東京ドームシティ アートプロジェクト」の一環となります。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 東京ドームシティ
  • 映像

村山悟郎:生成するドローイング — リボン状の系列

村山悟郎は絵画を学び、生命システムや科学哲学を理論的背景として、人間の制作行為(ポイエーシス)の時間性や創発性を探求しています。作品では自己組織的なプロセスやパターンが、絵画やドローイングを通して表現されます。近年は科学者と協働し、AIのパターン認識/生成や、人間の AIに対する感性的理解を探るなど、表現の幅を拡げています。   今回は東京ドームシティのセントラルパークにて、芝生広場を囲む長さ100m超の「パークリボンビジョン」を用いた映像作品を発表します。村山は本作にあたって、リボンビジョンの長さに合わせて、まず幅42cm、長さ17mにもおよぶ長大な絵巻物状のドローイングを制作しました。そして、制作中に一筆一筆を写真で記録し、およそ2か月をかけて描かれたドローイングの制作プロセスを、30秒に圧縮したアニメーションで表現しています。   村山は、即興でドローイングを描くことは、あてもなく街を散歩することに似ていると考えました。散歩が私たちと道とを巡り合わせ、街を常に再発見させるように、一筆一筆の線が次なる線を誘い、ドローイングは思わぬかたちに結び合わさっていきます——。   事業パートナー:株式会社東京ドーム *この展示は東京ドームシティからアートの魅力を発信することを目指し、 東京ドーム、東京藝術大学、東京藝術大学芸術創造機構が2022年に開始した「東京ドームシティ アートプロジェクト」の一環となります。
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 東京ドームシティ

八重洲・京橋エリア

  • 絵画・ドローイング

与那覇 俊:太太太郎 2023

与那覇は大学在学中に民族音楽のフォルクローレに熱中し、ボリビアで1年間の音楽遊学を経験。帰国後は精神的な困難をきっかけに、10年にわたり自身の思考をまとめた「脳ノート」を書き綴りました。2013年から本格的に絵画制作を始め、文字と絵を融合させた即興的なスタイルを発展させてきました。2021年には作品がパリのポンピドゥー・センターに収蔵されるなど、国内外で注目されています。   与那覇のカラフルな絵画は、油性ペンやボールペンによる細かいモチーフや文字が、画面を覆うように描かれています。それは彼がとらえる社会情勢や関心ごと、連想がもとになっています。近年はウォールアートなども手がけるなど、表現の幅を広げています。   今回は東京の玄関口である東京駅にて、多くの人々が行き交う八重洲口北口の大丸東京店前の床面に、大作《太太太郎》(2023年)を大判出力して展開します。与那覇は同作について「思考・発想・感情・愛・友情など、生きた人間にとって大事なことをひとつの紙に同時存在させています」と語ります。いつか自身の「意味ART」でアメリカ大陸からユーラシア大陸まで全世界を横断したい、とも言う彼の筆致は、壮大なスケールにつながっていることを想像させます。   協賛:大丸松坂屋百貨店 協力:東日本旅客鉄道株式会社   参考図版:《太太太郎》2023年(部分) ©Shun Yonaha
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 東京駅八重洲北口 大丸東京店前
  • サウンドウォーク

鈴木昭男:「点 音(おとだて)」in 東京ビエンナーレ 2025

日本におけるサウンド・アートの先駆的な活動者として知られる鈴木昭男は、1960年代より、音と場の関わり方を探求する姿勢によって、「自修イベント」やパフォーマンス、インスタレーションなどを国内外で展開してきました。今回は、鈴木の幅広い活動の中でも特に「聴く」ことにフォーカスした代表的なプロジェクト「点 音(o to da te)」を、都内 6か所で実施します。   「点 音」は、茶の湯の野点(屋外で行う茶会)のように、参加者が定められた場所(ポイント)で風景を感じながら耳を澄まして感覚を開くプロジェクトです。それぞれのポイントは、鈴木が自らまちなかを探索して、ユニークな環境音や反響音が聴ける場所を探し出したものです。   こうして選ばれたポイントには、佇みを誘う足跡の形と、聴くことを即す耳の形からなるマークが敷設されています。歴史ある寺院の境内にある老樹に向き合うものや、美術館やギャラリーの多い賑やかな通りの周辺など、参加者はマップをもとにそれらのポイントを訪ねます。ひとり静かにマークの上に立つと、聴覚意識がスイッチオンし、その時々の巷の音に耳を澄ます体験ができます。そこでは私たち誰もが「聴く側にも、作曲者にもなれる」、そうした能動性のある時間を過ごすことになるでしょう。   特別助成:公益財団法人石橋財団   » 鈴木昭男インタビュー:耳で都市を感じる「点 音(おとだて)」
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / ① 東叡山 寛永寺 根本中堂前 ② 不忍池辯天堂 ③ 松坂屋上野店周辺 ④ 末広町駅周辺 ⑤エトワール海渡リビング館周辺 ⑥ 京橋彩区(アーティゾン美術館/TODA BUILDING)周辺

大手町・丸の内・有楽町エリア

  • 絵画・ドローイング
  • 公開制作

佐藤直樹:そこで生えている。

佐藤直樹はグラフィックデザイナーとして活躍し、2013年から絵画制作へ重心を移しました。翌年に制作を始めた木炭画《その後の「そこで生えている。」》は、大判のベニヤ板を横に描きつなぐ形で継続され、様々な場での発表を経て、今では長さ300数十mを超えています。今回は近接する2会場で、その展示と公開制作を行います。佐藤のライフワークと言える作品が、12年間の時の層と共に、高層ビルの並ぶ街のなかで増殖していきます。   協賛:三菱地所株式会社     会場① 行幸地下ギャラリー 「そこで生えている。2018–2025」(展示) 《その後の「そこで生えている。」》(2014–)のうち、2018年以後に描かれた約202m(ベニヤ板221枚)を並べて展示します。佐藤が2013年に描いた《はじめの「そこで生えている。」》は、神田錦町周辺を歩きながら「では今日見た草木をここに描いてみます」と唐突に始まったといいます。以来12年にわたり続き、発展してきたこの行為について、佐藤は「その読み解きは、見た人に委ねてみたい」としています。   会場② 大手町パークビル 1階エントランス 「そこで生えている。2025–」(公開制作) 《その後の「そこで生えている。」》の369枚目以降を公開制作します。その始まり同様、今回の作画も制作現場の周辺を歩きまわることから始まります。佐藤は「オフィスビル街となる前の大手町一帯には武家屋敷が広がっていたが、それ以前は葦や葺の生い茂る湿地帯だった。そんな風景を幻視するつもりで、周辺から痕跡を見つけ出してみたい」と語ります。なお、行幸地下ギャラリーでの展示(2018–2025年の制作ぶん)より以前にあたる1枚目から147枚目についても、この機会に別会場にて公開予定です。
【開催期間中】2025.09.29 - 12.12 / ① 行幸地下ギャラリー ② 大手町パークビル1階エントランス
  • 絵画・ドローイング

大内 風:分散、上昇、規律、統合

大内風は、柔らかな色調で具象と抽象を行き来するような絵画を描いてきました。その作品は華やかさと儚さを同時に感じさせます。彼は制作を通じて生の本質をとらえようとしながら、言葉では表現しきれない思考や身体の中でうずく感情、とらえることのできない事象を、絵画表現に落とし込もうと試みています。   上昇と下降、繁栄と衰退、地図に引かれた直線、キャンバスという四角、人体というシステム、普及した概念や言葉、自己否定や安堵の気持ち、自然が表現する緩やかで曲線的な成長。それらはある大きな「力」の中で生まれる、小さな「力」たちなのだろう。だが、こういった言葉は、まるで一種の娯楽のようで、決して根本には辿り着かない。 ————大内 風   今回、大内は大手町ファーストスクエアの南側壁面をキャンバスにして、10×10mの大型作品を制作します。現地での滞在制作で空間と向き合い、街で生まれる言葉にならない言葉を紡ぐように描かれる世界は、観る人それぞれのなかに共感を生んでいくでしょう。   協賛:三菱地所株式会社 協力:株式会社大手町ファーストスクエア
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / 大手町ファーストスクエア

その他のエリア

  • 参加型プロジェクト

さんぽアートマップ、考現学マップ

東京ビエンナーレ2025のテーマ「いっしょに散歩しませんか?」のもと展開される2つのマッププロジェクトについて展示を行います。   散歩を通して発見する、断片的で、多様で、感覚的な気づき。それは私たちが、周囲の世界の解釈を能動的に更新する手がかりになります。このプロジェクトでは「さんぽ大学」プロジェクトとも連動しながら、フィールドワークを重ねて東京の新しい「アートマップ」をつくります。これらはデジタルアートマップとしての公開に加え、エトワール海渡リビング館でも展示予定です。   特別協力:株式会社エトワール海渡   イラスト:高橋和暉   さんぽアートマップ 東京ビエンナーレ2025の展示情報のほか、開催エリアに点在するパブリックアート・文化施設情報などを収集したマップを制作する試みです。また、まちに潜む面白情報を収集する「これもアート⁈発見隊」は、SNSでハッシュタグ「#これもアート発見隊」と共に誰もが参加できる取り組みとします。   黒石いずみ   考現学マップ 日本橋・馬喰町エリアと八重洲・京橋エリア内で、考現学の視点により江戸から現代までの生活者の痕跡を読み込み、ストーリーを紡ぐプロジェクトです。 考現学は「考古学」に対し、現在の人々の生活文化を調査・研究する学問で、建築学・民俗学研究者の今和次郎(1888–1973)により提唱されました。現代人の暮らしの観察、筆記、撮影等により対象を調査・分析する考現学は、後の生活学、風俗学、社会学の発展にも貢献。さらに美術家の赤瀬川原平や建築史家の藤森照信らによる「路上観察学会」の活動にも影響を与えました。 今回は考現学研究の第一人者、黒石いずみ氏(福島学院大学教授)を中心に地域の人々と共に作成した考現学マップを制作。まちのディテール、人の動きを観察することにより、新たなレイヤーが浮かび上がります。   » 黒石いずみが語る「物語を感じる地図=さんぽアートマップ」
【開催前】2025.10.17 - 12.14 / エトワール海渡リビング館 オンライン(ウェブサイト)

チケット
購入は
こちら