- シンポジウム
シンポジウム「新しいアートの国際協働に向けて:トランス・ビエンナーレの試み」
EXHIBITIONS
参考図版:《Sourceless Waters: White. Shadows》2024年
アジアン・アート・ビエンナーレ2024(国立台湾美術館) Image courtesy of the artists
ハノイを拠点とするチュオン・クエ・チーとグエン・フォン・リンは、2021年から共同制作を始めました。チュオンは日常の風景や素材に宿るリズム、比率、空間性を繊細に読みとく作品を展開し、グエンは映像や彫刻、インスタレーションを通して時間、身体、記憶の層を探ります。
《BREATHE》は彼女たちの新たなインスタレーション作品です。互いに結びつく2つの作品が呼応し合い、素材間の対話や身体的探究を展開します。本作は生き物のように立ち現れます。赤いスポンジ状の小片で表面を覆った布が波打つように舞い、籐の木の幹が踊るように回ります。自転車のサドルがひとりでに跳ね、送風管が金属棒を叩き、子ども時代の写真を映し出す鏡はメリーゴーランドのように回ります。女神の木像の頭部が床の丸鏡に横たわり、そしてそこには、二人それぞれの父親の古いコートがあります。
その空間は、自律的に循環する機械的な身体となります。表面と線。皮膚、肉、血管、髪のような何か。心臓と肺のリズム。血と空気。骨と筋肉。それぞれの彫刻的要素は、独自の呼吸パターンをもつ空間で瞑想するかのような、集合的な振り付けを構成します。そうして本作は記憶の残響を抱えつつ、静と動、優しさと暴力、変容と反復、圧縮と解放のあいだで相互作用を生み出していきます。
助成:国際交流基金
特別協力:株式会社エトワール海渡
テクニカルチーム:グエン・ニュー・バック、グエン・タン・ロン、レー・クアン・ミン、Studio Articulate
Special Thanks:Hop書店, Đỗ Thanh Lãng, Ba-bau AIR
マップ
JR総武線「馬喰町駅」4番出口より徒歩2分
都営新宿線「馬喰横山駅」A1出口より徒歩6分
撮影:Dat Vu & Jay Santiphap
グエン・フオン・リン(1985年生)とチュオン・クエ・チー(1987年生)は、長年にわたり友情と協働を重ねてきたアーティスト。それぞれが異なる実践を通じて、現代における身体性、記憶、そして時間への問いを深めている。
グエンの作品は、フォルムと時間の関係性を静謐に探求し、近年は身体の動作や痕跡を想起させる表現を通して、身体の持つ持続性や回復力への詩的なアプローチを展開している。一方、チュオンは、社会的・歴史的・個人的なレイヤーが交錯する中で、日常のスペクタクルやその中に潜む矛盾や謎に光を当てる映像・インスタレーション作品を発表してきた。
両者は2021年に、人生の同期するリズムに呼応するかたちで協働制作を始動。作品同士は対置され、重力や高さ、儚さといった身体的感覚を通じて空間に詩的な緊張をもたらし、観る者の感覚を揺さぶる。彼女たちの関心には、世代を超えて引き継がれる喪失の記憶や、さまざまな社会的文脈における女性の身体の物質性とイメージが含まれている。近年は、2024年の釜山ビエンナーレおよびアジア・アート・ビエンナーレで作品を発表。また2013年から、ハノイを拠点とするアーティスト主導のスペース「Nhà Sàn Collective(ニャー・サン・コレクティブ)」のキュレーション・ボード・メンバーとしても活動している。
日本橋・馬喰町エリア
エトワール海渡リビング館