EXHIBITIONS
参考図版:《静物畫 ー 群馬県桐生市元料亭亀枡》2024年 撮影:小瀬村真美
小瀬村真美は、古典絵画を現実の事物を用いながら写真・映像表現として再現することで、絵画の裏に視点を差し込もうとする独特な制作手法を展開しています。
小瀬村は今回、東叡山寛永寺の「葵の間」に掛けられている一枚の油彩画に注目しました。これは、江戸の15 代将軍・徳川慶喜が描いた《西洋風景》(1887–97)の複製だとされます。慶喜は1867(慶応3)年に政権を天皇に返上する「大政奉還」を行いましたが、1868年2 月12 日から同年4 月の江戸城の無血開城まで約2か月間、この場所で謹慎生活を送ったとされています。その後に描かれた《西洋風景》は、歴史人の筆による絵画として貴重なだけでなく、当時の日本画と西洋絵画の技法が交錯する作品であり、変革期の美術を映す貴重な存在でもあります。
小瀬村はこの《西洋風景》、および同時期に慶喜が描いた《日本風景》(1870頃)を手がかりにした写真作品を2点制作し、葵の間に展示します。そこでは、歴史的な空間と絵画の記憶が現代のアーティストによるアプローチで重ね合わせられ、新たな体験が創出されるでしょう。
特別協力:東叡山 寛永寺
協力:東京藝術大学
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東京藝術大学油画専攻准教授、イメージフォーラム映像研究所講師。古典絵画を現実の事物を用いながら写真・映像表現として再現することで、絵画の裏に視点を差し込もうとする独特な制作手法を展開する。写真を使用したアニメーション技法からなる「静物動画」、絵画の内包する時間を凝縮する「静物写真」などによって、生々しい現実を捉えながらも静謐な絵画空間を再現する。野村美術賞(2005年)、五島記念文化賞(2015年)などを受賞。Asia Societyのニューメディアアートコレクションの他、東京都現代美術館、東京藝術大学、関渡美術館(台湾)、群馬県立館林美術館などに作品収蔵。原美術館(品川)での個展(2018年)の他、国内外の展示や映画祭に参加。