EXHIBITIONS
鈴木理策《日本橋室町から北側を見る》2025年
7組の写真家、アーティストが東京を歩き、「まちの今」を写真作品化。そのオリジナルプリントを特設会場(エトワール海渡リビング館)で展示するほか、ネット上のデジタルマップでも公開し、人々が撮影地点に訪れて実際の風景に対峙できるプロジェクトです。さらに、セブン‐イレブン各店舗の富士フイルムマルチコピー機で安価にプリントできる仕組みも用意し、新しい写真鑑賞やコレクションの楽しみ方を探ります。
協賛:富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社
《#3418》(シリーズ〈山手通り 2008年〉より)
《Tokyo / Ueno #001》2025年、発色現像方式印画© Mari Katayama, courtesy of Mari Katayama Studio and Galerie Suzanne Tarasieve, Paris
《red1》2025年(シリーズ〈URBAN RITUAL /Tokyo2025〉より)
街を散歩していると、目に映し出される全ての風景を創りだしている制作者をイメージしてしまう。
「路上の石」があるとすると、アスファルトを敷き白線を引く道路工事者の行為の上に、誰かが運んできた石が路肩に息を潜めるようにじっとしている、と読み解く。ビル群のスキマに小さな一軒家を見ると、戦後の焼け野原に木造建築を建てた棟梁達の技術や考え方と、型枠にコンクリートを流し込んでビルを建てる建築のサスティナビリティを比較するように見てしまう。
私は、行為の連続性から創造される「部分と全体」の因果関係を、作品やプロジェクトを通して表現してきた。釘一本の意思と、東京という都市の意思。部分を創り出す創造力と、都市を構成する全体の創造力は、人間社会や地球環境にいかなる関係を築いているのか? その関係項に私がひとつの行為を加える事で、部分と全体の関係は、どのように変化するのか?
今回の写真制作においては、風景を構成する部分と全体の関係をひとつの表現体として捉えている。そしてその表現体を見つめる私の視線を黄色いボールに置き換え、風景全体に新たな部分として介入する試みである。
*室内から撮影した場所が3か所あります。その場所に入るためのルールは、ウェブサイトやマップに記載します。
《INVISIBLE PEOPLE》2025年(シリーズ〈underpass poem〉より)
《日本橋室町・東を望む》2025年
〈Backshift 2025〉
東京ビエンナーレ2025の開催エリアには、過去に私が個展をした場所が複数含まれている。「犯人は現場に戻る」という俗説に沿うかのような、あるいは帰巣本能に促されるような気持ちで、しばらく行くことがなかったその場所を訪ねてみる。
かつて短期間だったが自分の作品を置いた記憶は鮮明で、まだその時のストレスは続いている。当時は作品を展示する空間になるべく、壁を塗り、照明に苦心した小さな経験の場だったが、今は建物や土地という不動産としての別の相がみえる。いつその場と関わったかということ、そして今回もその場を見にいったということ。この空間に個人的に関わる2点の事実を、時間軸を通して文章のように結びつけるために撮影という方法を選んだ。
建物は35年前と変わらずにある場合もあれば、すでに取り壊されて駐車場になっている場合もある。共通していたのは、当時の関係者は現在その住所にはいないということである。
マップ
写真家。1958年岩手県陸前高田市生まれ。東京を拠点に自然・都市・写真のかかわり合いに主眼をおいた作品を制作。2001年ヴェネツィア・ビエンナーレに日本代表の一人として出品。2012年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展日本館に出品(金獅子賞)。2001年第42回毎日芸術賞。2012年芸術選奨文部科学大臣賞。日本芸術院会員。
1987年、埼玉生まれ、群馬県育ち。2012年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。片山の活動の核心は、自身の身体の中で日々を生きることであり、その身体を生きた彫刻、マネキン、そして社会を映し出すレンズとして使っている。手縫い・手作りのオブジェと写真の組み合わせは「自然、人工、正しさ」といった社会の規範的な考えを映し出し、それに挑戦する作品を作り続けている。
また、2011年より「ハイヒール・プロジェクト」を主催し、身体能力に関わらず全ての人が「選択の自由」と持つことと、「選択する最前提条件としての選択肢」を用意することを目指す。アーティストに留まらず歌手、モデル、講演者としてもステージに立ち、活動し続けている。
写真家。多摩美術大学アートとデザインの人類学研究所所長 イメージの発生と記憶などをテーマに広範な活動をつづけている。あいちトリエンナーレ2016芸術監督、台湾最大の芸術祭「台3線芸術祭」2023では国際キュレーターを務めた。『風景論ー変貌する地球と日本の記憶』(中央公論新社)で2019年度日本写真協会賞受賞。近著に『写真論――距離・他者・歴史』(中央公論新社、2022年)、『ヒルマ・アフ・クリント 色彩のスピリチュアリティ』(インスクリプト、2025年)など。
アーティスト/東京藝術大学美術学部教授
芸術未来研究場 アート×ビジネス領域長
1963年秋田県大館市生まれ。1993年「The Ginburart」(銀座)、1994年の「新宿少年アート」(歌舞伎町)でのゲリラ型ストリートアート展。秋葉原電気街を舞台に行なわれた国際ビデオアート展「秋葉原TV」(1999〜2000)、「ヒミング」(富山県氷見市)(2004〜2016年)、「ゼロダテ」(秋田県大館市)(2007〜2019年)など、地域コミュニティの新しい場をつくり出すアートプロジェクトを多数展開。1997年よりアート活動集団「コマンドN」を主宰。
2010年民設民営の文化施設「アーツ千代田 3331」(東京都千代田区)(2010〜2023年3月閉館)を創設。地域に開かれたアートセンターとして、約13年間運営を行う。2001年第49回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館に出品。マクドナルド社のCIを使ったインスタレーション作品が世界的注目を集める。2020年より「東京ビエンナーレ」の総合ディレクターを務める。著書に『美術と教育』(1997)、写真集『明るい絶望』(2015)、『新しいページを開け!』(2017)、『アートプロジェクト文化資本論:3331から東京ビエンナーレへ』(2021)。平成22年度芸術選奨受賞。2018年日本建築学会文化賞受賞。
撮影:濱田晋
2012 年より活動を開始。メンバーは高須咲恵、松下徹、西広太志。映像ディレクターとして播本和宜が参加。「風景のノイズ」をテーマに、路上を舞台とした作品制作・発表を行うことを活動の主とし、ストリートカルチャーに関わる多様なアーティスト達と共同したプログラムを行っている。
写真家。1963年、和歌山県新宮市生まれ。1998年、地理的移動と時間的推移の可視化を主題にシークエンスで構成した初の写真集 『KUMANO』 を出版し、2000年『PILES OF TIME』で第25回木村伊兵衛写真賞を受賞。ライフワークともいえる熊野での撮影の他、南仏のサント・ヴィクトワール山、セザンヌのアトリエ、桜、雪のシリーズといった多様な対象を異なるアプローチでとらえているが、一貫しているのは「見ること」への問題意識と、写真というメディア の特性への関心である。
主な展覧会に「絵画と写真 柴田敏雄と鈴木理策」(アーティゾン美術館、東京、2022年)、「意識の流れ」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川/東京オペラシティアートギャラリー/田辺市立美術館、和歌山、2015–2016)、「水鏡」(熊野古道なかへち美術館、和歌山、2016年)、 「熊野、雪、桜」 (東京都写真美術館、2007年)など。
1967年埼玉県生まれ。1993年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修士課程修了。日常社会の制度や仕組みを批評的に捉え、人間の思考の「型」を見出すことをテーマとしている。近年の個展に、「発生法──天地左右の裏表」(東京都現代美術館、2023年)、「資本空間 スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸vol.1」(ギャラリーαM、東京、2015年)が、またグループ展に「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」(国立新美術館、東京、2019年)がある。